はじめに:合法の仮面を被った新たな脅威
「ゾンビたばこ」という衝撃的な名前をご存じだろうか。
見た目はただの電子タバコ。しかしその中身には、医療現場で麻酔薬として使用される成分「エトミデート」が混入されていることがある。
この「ゾンビたばこ」は、使用者を一時的に意識不明やけいれん状態に陥らせ、まるでゾンビのような異常行動を引き起こす危険な薬物使用法だ。
この記事では、その実態と恐ろしい症状、背景にある社会的問題、そしてネット上の市民の声までを詳しく解説する。
合法・違法の境界が曖昧になりつつある今、薬物に対する正しい知識と警戒心が何よりも重要だ。

ゾンビたばことは何か?
ゾンビたばことは、医療用麻酔薬である「エトミデート(Etomidate)」を電子タバコのリキッドに混ぜて吸引する行為、またはその製品を指す俗称だ。
エトミデートは、1964年にベルギーで開発され、主に手術時の麻酔導入剤として海外では使用されている。
本来は病院での短時間の鎮静・麻酔を目的としたもので、日本では承認されていない未承認薬物である。
このエトミデートを悪用した「ゾンビたばこ」は、2024年5月16日に厚生労働省より**「指定薬物」に指定された。これにより、医療用途以外での製造・輸入・販売・所持・使用はすべて違法行為**となっている。
指定薬物とは?
「指定薬物」とは、人体への影響が強く、乱用のおそれがあると判断された薬物成分を対象に、厚労省が規制対象としたもの。
これに指定されると、たとえ少量でも医療目的以外での所持や使用が法律違反となり、刑事罰の対象になる。
なぜゾンビと呼ばれるのか?恐ろしい症状の実態
エトミデートを含む電子たばこを吸引した者には、極めて深刻な症状が現れることがある。
それは「意識の混濁」「全身のけいれん」「錯乱」「泥酔状態に似た運動障害」といったもので、まるでホラー映画に登場するゾンビのような状態に陥る。
実際に報告されている主な症状:
- 意識がもうろうとし、目の焦点が合わない
- 自立歩行が困難になり、ふらつきながら歩行
- 手足の筋肉がけいれんする
- 自分の意思と関係なく叫ぶ、泣く、笑うなどの異常言動
- 周囲の声かけに反応しない、または暴力的になる
- 自傷行為や転倒事故の危険
これらの症状が、吸引から数分以内に発症するため、公共の場でも突然倒れたり、混乱した行動をとるケースが確認されている。
その様子がまさに「ゾンビ」に見えることから、この名称がついたのである。
阿部和穂・武蔵野大学薬学部教授によれば、
「エトミデートは、ほんの微量でも中枢神経を強く抑制するため、使い方を誤ると取り返しのつかない事態になる」と警鐘を鳴らしている。
日本国内で確認されたゾンビたばこの事例
2024年以降、日本国内でもゾンビたばこによる逮捕事例が相次いで報告されている。
三重県四日市市(2024年6月)
30代の男性がエトミデートを所持・使用していたとして逮捕。
本人は「合法薬物だと思っていた」と供述しており、違法性の認識が乏しいケースだった。
沖縄県那覇市(2024年6月5日)

16歳の少年が、路上で奇声を上げながらけいれんし、周囲の制止を振り切って暴れたため通報・逮捕された。
所持品からゾンビたばことみられるリキッドが見つかった。
埼玉県浦添市(2024年5月)
20代の男性が道端で倒れているところを通行人が発見。
病院に搬送され、薬物検査の結果、エトミデートの痕跡が検出された。
これらの事件は、いずれも「電子タバコ」という手軽な媒体を使っている点で共通している。
外見からは薬物の含有がわからず、無自覚に使用した可能性もある。
なぜ若者がターゲットになるのか?
ゾンビたばこが急速に若年層へ広がっている理由のひとつは、「合法ドラッグ」や「リキッド大麻」といった過去の薬物と同様、見た目が普通で、敷居が低いからである。
さらに、SNSやチャットアプリ、闇サイトなどを通じた非対面取引の拡大が拍車をかけている。
特に未成年層は、薬物の知識が乏しいまま、好奇心や同調圧力、あるいは巧妙な勧誘により手を出してしまうケースが多い。
Yahoo!コメントでは、次のような声もあがっている:
「周囲が吸ってるから」「合法だから大丈夫」と思っている時点で、薬物の恐ろしさに対する教育が足りていない。
違法かどうかではなく、一度使ったら人生が変わるということを学校で教えるべきだ。

法整備の現状と課題
日本においては、薬物の規制は後手に回ることが多い。
エトミデートが指定薬物となったのは2024年5月であり、それ以前に出回っていた製品については「法の抜け穴」を突かれていた可能性が高い。
また、以下のような課題も浮き彫りになっている:
- 取り締まりや規制に時間がかかる
- 医療用薬品の転用ルートが不透明
- 初犯に対する処罰が軽すぎる(執行猶予つきなど)
一部ネットユーザーからは、「日本は薬物犯罪に甘すぎる」として、最低でも実刑20年、無期懲役を求める声も上がっている。
ネットの反応:市民の危機意識は高まりつつある
Yahoo!ニュースのコメント欄には、以下のようなさまざまな意見が投稿されている。
「知らずに副流煙を吸ってしまったらどうなるのか。周囲への影響も深刻」
「違法薬物であっても廃人になることを知らない若者が多すぎる」
「学校での講演、SNS広告規制、家庭での教育を組み合わせないと止められない」
「海外からの密輸ルートを断ち切るには、国家的な対策が必要」
「合法=安全という誤解が広まっているのが問題」
このように、市民の多くが現状に対して警鐘を鳴らしており、教育・規制・処罰のすべてを強化すべきという共通認識が広がりつつある。
今後の対策:社会全体で「薬物へのNO」を
ゾンビたばこのような新型薬物は、これからも次々と形を変えて現れるだろう。
そのたびに後手の規制を繰り返していては、未成年者や無知な使用者が犠牲になるだけだ。
今後必要とされる主な対策は以下のとおりである。
- 学校教育での「薬物リテラシー教育」の導入と強化
- 厳罰化と同時に「使用に至る背景」への理解と支援
- SNS、ECサイト、暗号通貨決済などデジタル犯罪への監視強化
- 医療・教育・警察の連携による地域啓発と情報共有
そして、私たち一人ひとりが「知識を持ち、警戒する」ことが何よりも重要である。
まとめ:薬物の誘惑は、あなたのすぐ隣にある
ゾンビたばこは、電子タバコの皮を被った極めて危険な薬物だ。
目に見えない形で私たちの社会に侵食し、人生を狂わせ、家族を破壊する可能性を持つ。
「一回だけ」「友達が勧めたから」「合法らしい」といった安易な判断が、一生を狂わせるきっかけになる。
情報の力で身を守ろう。疑わしきものには近づかず、周囲の人にも警鐘を鳴らしていこう。
薬物に「安全な使い方」など存在しない。
今、正しい知識と行動が、未来を守る最初の一歩になる。

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