【結論】“今すぐ”の備蓄が、今後の生活を守る
2025年後半、日本では深刻なコメ不足と価格の異常高騰が現実となっています。
この状況は一時的なものではなく、構造的な問題に起因しており、今後さらに悪化する可能性すらあるというのが専門家の一致した見方です。
現在の見通しでは、一般消費者向けの5kg米が4,000円超という価格水準が定着しつつあり、業者による早期買い占めも始まっています。
「まだ買える今」のうちに備蓄を行うことが、家計を守り、安定した食生活を維持するための現実的な対策です。

左:三橋貴明氏 右:鈴木宣弘氏
1. 2025年後半、日本のコメ市場に何が起きているのか?
現在、日本のコメ市場はかつてないほどの供給不安と価格高騰に直面しています。2025年の後半に入っても、改善の兆しは見られず、むしろ状況はさらに悪化する懸念が強まっています。
■ コメの流通在庫は“わずか3ヶ月分”しかない
農林水産省のデータによると、2025年3月末時点の民間流通在庫は179万トンでした。
日本の年間コメ消費量はおよそ700万トンで、月あたりに換算すると約60万トン。つまり現在の在庫はわずか約3カ月分という極めて危機的な水準です。
本来、備蓄米は需給の安定化のために5〜6カ月分は維持することが望ましいとされていますが、それを大きく下回っており、備蓄放出による対応にも限界があるのが実情です。
しかも、その在庫の中には等級が低く、食味や品質に問題がある米も含まれているため、実際に市場に出回る「食用として問題のない米」はさらに少ないと見られています。

■ 夏の端境期(6〜8月)に突入、供給危機は“目前”
米の収穫時期は例年9月以降であるため、6〜8月は**「端境期(はざかいき)」**にあたります。この時期は新米がまだ出回らず、備蓄と前年産米で需要を賄う必要があります。
しかし、2024年産のコメは以下の理由でそもそも供給量が少なかったのです。
- 2023年夏の猛暑で稲が高温障害を受け、収穫量が減少
- 品質の劣化で出荷できない「等外米」が増加
- 減反政策の影響で、そもそも作付面積が足りていない
つまり、この夏(2025年)の3カ月間は、明らかに供給が需要を下回ることが確実視されています。
特に業務用米(外食チェーン、パックご飯メーカーなど)の需要が集中する中、これら事業者が“先に押さえる”動きを加速させており、一般家庭用の供給量が相対的に減少する恐れもあります。
■ 2025年秋の“新米”もすでに高騰…収穫前から契約争奪戦

例年、新米の取引価格は収穫期である9月〜10月に本格的に決まります。ところが、今年(2025年)は異例の動きが起きています。
- 春の時点(3月)で60kgあたり2万5,000円という高値で契約が成立
- これは5kg換算で消費者価格が4,000円を超える水準
- もはや“先物取引”のように、実物ができる前から価格が決まっている
この背景には、**前年に米を確保できなかった事業者の“買い急ぎ”**があり、農家側としても前年の販売失敗の教訓から、早期に高値で契約する動きが強まっているのです。
結果として、秋の収穫期に市場に出回る米の価格はすでに高止まりが確定的。「新米なら安くなる」という期待は通用しない状況になっています。
■ 消費者に直接降りかかる「価格インフレ」の現実

コメは日本の主食であり、多くの家庭で毎日のように消費されています。
その価格が5kgで4,000円を超えるとなれば、食費全体に与える影響は非常に大きく、以下のような二次的波及も懸念されます。
- 弁当・外食チェーンなどの値上げラッシュ
- 学校給食や介護施設などへの安定供給が困難
- 低所得層を中心に食生活の質的低下
つまり、今回のコメ不足は単なる「米が少し高くなる」という問題ではなく、家計や食生活、社会的なセーフティネットにも影響を及ぼす構造的リスクなのです。
このように、2025年の日本のコメ市場は、需給逼迫・価格高騰・流通混乱の「三重苦」に陥っており、今後しばらくは正常化の見通しが立たない状況にあります。
そのため、消費者一人ひとりが早期に備えることが、最も現実的な自衛策と言えるでしょう。
2. コメ不足の原因は?根本にある「政策の失敗」
■ 減反政策が招いた“構造的な米不足”──50年のツケが噴出

日本のコメ不足は、突発的な自然災害や一時的な市場の混乱によるものではありません。その根底には、政府の長期的な農業政策の失策があります。とりわけ、1970年代に導入された「減反政策」は、日本のコメ生産に決定的な影響を与えました。
「減反」とは、余剰米の発生を防ぐために、農家に対して水田の転作(他作物への転換)を促す制度です。
政府からの交付金と引き換えに、農家はコメの生産量を抑え続けてきました。
しかし、その結果として起きたのは、次のような長期的弊害です。
- 米の生産能力そのものが半減
- 1970年代に年間約1,400万トンあったコメの生産能力は、2020年代には600〜700万トン台にまで縮小。
- 農業人口の激減
- 農家の高齢化と後継者不足により、離農が加速。特に米農家は収益性の低さから敬遠され、耕作放棄地が全国的に拡大。
- 担い手不在のまま地域農業が崩壊
- 地域ごとに米作りを担う農家集団が消滅し、一度失った基盤は簡単には再建できない構造に。
つまり、米の供給基盤が“計画的に”削がれてきたことで、いざ不足が表面化した時に対応手段がなく、供給力の“底抜け”が起きているのです。
政府は「米余り時代」の成功体験から抜け出せず、近年まで**“需要が減っているから増産不要”という前提を捨てられずにいた**ことも、今の危機に拍車をかけています。
■ 2023年〜2024年、異常気象が“とどめ”を刺した

減反政策により基盤が弱体化した上に、2023年〜2024年の異常気象が直撃しました。全国的な猛暑・水不足・日照不足が稲作に深刻な打撃を与えたのです。
農林水産省は当初、「2024年の収穫は平年並み」と公表していましたが、現場の声は異なります。
- 収量減少
- 実際の収穫量は平年より1〜2割少ないという報告が各地で上がっています。
- 品質劣化
- 高温障害により、「粒が小さい」「亀裂がある」「炊いても食味が落ちる」など、出荷できない“等外米”が増加。
- 生産者の疲弊
- 農家にとっては「収穫できない=収入ゼロ」に直結し、来年の作付けを諦める動きも拡大中。
つまり、コメは単に「量が足りない」のではなく、「質も伴わない」という二重苦に直面しています。
このように、長期的な政策ミスと突発的な自然環境の悪化が重なったことで、2025年の米不足は“避けられなかった危機”となったのです。
問題は一時的な流通トラブルなどではなく、まさに「構造的欠陥」。この視点を理解してこそ、今後の備えや行動に意味が生まれます。
3. 政府の対応は後手に回り、混乱を助長
農林水産省は2024年もなお、「米は余っている」と主張し続け、生産拡大を指示しませんでした。
実際には流通量が不足しているにもかかわらず、「JAが隠している」「流通が悪い」などと責任を他所に転嫁。
問題の本質は農政の構造的な誤りにあるにも関わらず、それを認めず、打開策も示さないまま事態は悪化の一途をたどっています。
4. スーパーから米が消える?事業者の“買い占め”が先行

すでに飲食業者や加工業者は、「今後米が確保できない」という危機感から、農家と直接契約を結び、先に確保しています。
その結果、JAや卸業者が農家から米を買おうとしても「もう在庫がない」という事態が発生し、市場に出回るコメそのものが不足しているのが現実です。
この状況が一般家庭の購入にも影響を与え始めており、スーパーから米が消える可能性も現実味を帯びています。
5. アメリカからの輸入米で本当に解決するのか?
政府は米国からの主食用米の輸入増加を検討していますが、これは日本の米農家を壊滅させかねない危険な策です。
現在、日本は「ミニマムアクセス」として77万トンの米を毎年輸入していますが、主に家畜の飼料用です。
これを主食用に転用すれば、一時的には価格が下がる可能性があるものの、国内農業は持ちこたえられません。
安価な米に駆逐された農家が廃業すれば、将来的に日本の食料自給率が決定的に低下し、安全保障にも関わる問題となります。
6. 一般家庭と事業者が“今すぐ”やるべきこと
この状況を踏まえて、今私たちができることは何でしょうか。
【個人・家庭向け対策】
- パックご飯・無洗米・乾燥米など長期保存可能な米製品の備蓄
- 地元農家との直接購入・ふるさと納税の活用
- コメ消費の効率化と節約術の見直し
【事業者向け対策】
- 長期契約・予約購入による安定的な調達確保
- 米代替品(小麦・芋類等)を用いた商品開発・原料転換
- 卸業者との価格リスクヘッジ契約
7. 食料安全保障を守るために私たちが意識すべきこと
今回の問題は単なる価格変動ではありません。
これは**「食料安全保障」**の問題です。
長年の政策ミスとそれに伴う構造的な弱体化、さらに気候変動という外部要因が複合し、私たちの食卓を直撃しています。
これを対岸の火事と見るのではなく、生活者・消費者一人ひとりが「食を守る主体」として考えることが重要です。

【まとめ】“もうすぐ”では遅い。「今すぐ買い溜めを」
- コメ価格は2025年後半、5kg=4,000円超が定着
- スーパーでの買い控えは、むしろ今後のリスクに
- 今起きているのは政策の失敗と供給不全の“人災”
- 「備蓄」はあなたの家庭を守る最善の手段
もはや「米が買えなくなるなんて大げさだ」とは言えない時代が来ています。
買える今のうちに、計画的な備蓄を始めましょう。
参考動画:【三橋貴明】今必要ない人も買い溜めしてください。買い占めが始まります【鈴木宣弘】
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