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実は核融合発電って不可能?できるとしたら実用化はいつ?危険性は?日本は最先端?分かり易く解説

技術
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核融合発電は、「無限のエネルギー源」「究極のクリーンエネルギー」として期待されています。しかし、技術的な課題が多く、「核融合発電は不可能ではないのか?」「実用化はいつになるのか?」 という疑問を持つ人も少なくありません。

本記事では、核融合発電の技術的課題、実用化の見通し、危険性、世界の最新研究動向を詳しく解説します。


1. 核融合発電は不可能なのか?技術的課題とは

1-1. 核融合の仕組みと発電原理

核融合発電とは、軽い原子核(重水素や三重水素)が融合してヘリウムを生成する際に発生するエネルギーを利用する発電方式 です。

この反応では、質量がわずかに失われ、その失われた質量が E = mc²(アインシュタインの質量エネルギー等価式) に基づいて膨大なエネルギーに変換されます。

核融合と太陽のエネルギー生成

核融合反応は、太陽や恒星がエネルギーを生み出すのと同じ原理 です。ただし、太陽では強い重力が圧縮することで比較的低温(約1500万度)でも核融合が起こりますが、地球上ではその圧力を作れないため、1億度以上の超高温 が必要になります。

核融合反応の種類

核融合にはいくつかの方式がありますが、最も実現可能性が高いのは 「D-T反応(重水素-三重水素反応)」 です。

D-T反応の基本式:
D+T→He+n+17.6MeV\text{D} + \text{T} \rightarrow \text{He} + \text{n} + 17.6 \text{MeV}D+T→He+n+17.6MeV

  • D(重水素)とT(三重水素)が融合し、ヘリウム(He)高速中性子(n) を生成
  • 反応あたり17.6MeV(メガ電子ボルト)のエネルギー を放出

他の核融合反応(D-D反応、p-B11反応)も研究されているが、実用化には更なる技術開発が必要 です。


1-2. エネルギー収支の壁

現在の核融合実験では、核融合反応で生み出されるエネルギーよりも、反応を維持するために投入するエネルギーの方が多くなっています。これが エネルギー収支(Q値) の壁です。

エネルギー収支(Q値)の基準

  • Q < 1 :投入エネルギーの方が多い(現在の核融合実験のほとんどがこれに該当)
  • Q = 1 :投入エネルギーと生成エネルギーが等しい(ブレークイーブン)
  • Q > 1 :発生エネルギーが投入エネルギーを上回る(発電に近づく)
  • Q ≫ 1(Q=10以上) :商業発電が可能な水準

米国LLNLのエネルギー収支プラス実験(2022年12月)

  • 手法:レーザー核融合(慣性閉じ込め方式)
  • 結果
    • 投入エネルギー:2.05MJ(メガジュール)
    • 出力エネルギー:3.15MJ(メガジュール)
    • Q値 = 1.54(初めて1を超えた)
  • 問題点
    • レーザー装置自体のエネルギー効率を考慮すると、全体ではエネルギー損失が大きい
    • 瞬間的な反応であり、発電所として連続運転できない
    • レーザー照射コストが高く、商業化には不向き

現在、発電技術として期待されているのは、磁場閉じ込め方式(トカマク型) ですが、EAST(中国)、JT-60SA(日本)、ITER(フランス)では、依然としてエネルギー収支がマイナスの状態が続いています

解決策:エネルギー収支を改善するための技術

  1. 超伝導コイルによる磁場制御の向上
    • ITERでは世界最大級の超伝導磁石 を採用し、より強力な磁場でプラズマを閉じ込める。
  2. プラズマ加熱技術の強化
    • EASTではマイクロ波加熱(電子サイクロトロン共鳴加熱, ECRH) を採用。
    • JT-60SAでは中性粒子ビーム加熱(NBI) を活用し、加熱効率の向上を図る。
  3. 自己持続型の燃焼プラズマの実現
    • 自己加熱(ブートストラップ電流) の実現により、外部エネルギー供給なしに燃焼を継続させる。

1-3. プラズマの長時間安定化が難しい

核融合発電には、1億度以上の超高温プラズマを数時間単位で維持する技術 が必要です。

最新の成果

  • 2024年、中国EASTが1,066秒(約17分)のプラズマ維持に成功(従来の403秒を大幅更新)
  • しかし、商用炉には数時間〜数日単位の連続運転 が必要

主な課題

  1. プラズマの不安定性
    • 高温のプラズマは乱流や振動で暴走しやすい
  2. 炉壁との接触による冷却
    • プラズマが炉壁に触れると、瞬時にエネルギーを失い冷却される
  3. 磁場閉じ込めの精度向上
    • 磁場の制御が難しく、長時間の安定維持が困難

解決策

  • AIによるプラズマ制御の最適化(Googleが研究中)
  • 超伝導磁石の性能向上(ITERでは世界最強の磁場を生成予定)

1-4. 炉の耐久性と材料問題

核融合炉では、発生した高速中性子が炉壁を破壊 するため、耐久性のある材料が求められます。

現在の取り組み

  1. 耐放射線材料の開発
    • タングステン合金・ベリリウムを使用し、耐久性を向上
  2. 液体リチウム被覆壁の研究
    • 中国のCFETRでは、液体リチウムを炉壁に採用し、損傷を軽減する試みが進行中
  3. 自己修復材料の研究
    • 高速中性子による損傷を自己修復する新素材 を開発中

2. 核融合発電の実用化はいつ?ロードマップを解説

各国は 2050年頃 を核融合発電の実用化目標としており、複数の段階を経て技術開発が進められています。現在進行中のプロジェクトを時系列で整理すると、以下のようなロードマップが描かれています。

計画内容目標時期
ITER(国際熱核融合実験炉)世界最大の核融合実験炉2025年 ファーストプラズマ
CFETR(中国)ITERの次世代炉2030年頃
DEMO炉(日本・EU)初の実証炉2040〜2050年

ITER(国際熱核融合実験炉):世界最大の核融合実験炉

ITER(International Thermonuclear Experimental Reactor)は、フランス南部のカダラッシュ(Cadarache) で建設中の 世界最大の核融合実験炉 です。EU、日本、アメリカ、中国、ロシア、韓国、インド の7極が共同で開発を進めており、総工費は2兆円以上 にも及びます。

ITERの主な目的

  1. プラズマの長時間安定化(目標:400秒以上の運転)
  2. Q値(エネルギー収支)を10以上にする(現在は0.7程度)
  3. 自己持続燃焼(自己加熱)を達成し、外部加熱なしで反応を継続する
  4. トリチウム燃料のリサイクル技術を確立

ITERのスケジュール

  • 2025年 :ファーストプラズマ(初期運転開始)
  • 2035年 :本格的な核融合実験(D-T燃料を使用した発電テスト)

ITERの成功が、商用炉への道を切り開く重要なステップとなります。


CFETR(中国):次世代の核融合実験炉

中国のCFETR(Chinese Fusion Engineering Testing Reactor) は、ITERの後継として、中国独自の次世代核融合炉として計画されています。ITERの技術を基に、発電規模を拡大し、商業炉への橋渡しを目指す のが特徴です。

CFETRの目標

  1. 発電出力200〜1000MW(ITERの10倍規模)
  2. トリチウム増殖技術の確立(燃料を自給できる炉)
  3. 長時間運転(数千秒〜1時間以上)
  4. 商業炉設計のための基盤データ収集

CFETRは 2030年頃に初稼働 を予定しており、中国が核融合技術のリーダーになる可能性 も指摘されています。


DEMO炉(日本・EU):初の実証炉

DEMO炉(Demonstration Power Plant)は、ITERやCFETRで得られた技術を基に、実際に発電し、送電網へ電力を供給することを目的とした実証炉 です。

DEMO炉の主な目的

  1. 商業用原型炉として、発電規模を1000MW以上に拡大
  2. 24時間連続運転を可能にし、安定した発電を実現
  3. トリチウムの自己供給と燃料リサイクルを確立
  4. 実際の送電システムと接続し、電力供給テストを行う

DEMO炉の設計は現在も進行中で、2040〜2050年の運転開始 を目標としています。


核融合発電の実用化へのステップ

ITERの実験が成功すれば、2035年頃にDEMO炉の建設が本格化 し、2040〜2050年には商用炉が実現する見込みです。

このロードマップが順調に進めば、2050年には核融合発電所が実際に電力供給を開始する可能性 があります。ただし、技術的な課題や予算の問題により、計画が遅延するリスク も指摘されています。


3. 核融合発電の危険性とは?

核融合発電は「安全なエネルギー」とされていますが、完全にリスクがないわけではありません。特に 放射性物質の管理燃料の取り扱い に関する課題があります。


3-1. 放射性物質の影響

核融合発電では、燃料としてトリチウム(三重水素, T)を使用するため、その管理が重要な課題となります。

トリチウムとは?

  • 水素の同位体 の一種で、弱い放射線(β線) を放出する放射性物質。
  • 半減期は 約12.3年 で、時間が経つと自然にヘリウム(安定な気体)に変化する。
  • 放射線のエネルギーが低いため、人体に対する影響は比較的小さい(紙や皮膚で遮蔽可能)。
  • ただし、大量に取り扱う場合、環境への影響や漏洩リスク を考慮する必要がある。

トリチウムの課題

  1. 自然界にはごく少量しか存在せず、核融合炉内で生成する必要がある。
  2. 水に溶けやすく、環境中へ拡散しやすいため、厳格な管理が求められる。
  3. 長期的なトリチウム供給計画が必要であり、持続可能な燃料サイクルを確立する必要がある。

トリチウムの安全管理と対策

トリチウムは、原子力発電所や核兵器開発などでも使用されており、管理技術は確立されつつあります。特に ITERやJT-60SAでは、トリチウムを安全に管理・供給するための研究 が進められています。


トリチウム管理の具体的な対策

1. 「増殖ブランケット」によるトリチウムの閉じ込め(ITERで研究中)

増殖ブランケット(Breeding Blanket) は、核融合炉の炉壁内部に設置される特殊な構造で、トリチウムを生成し、同時に漏洩を防ぐ役割 を担います。

仕組み:

  • 増殖ブランケットには リチウム を含む材料が使用される。
  • 高速中性子がリチウムと反応し、トリチウムを生成(ブリーディング反応)。
  • 生成されたトリチウムは回収され、燃料として再利用される。

期待されるメリット:

  • トリチウムを外部から供給する必要がなくなる(燃料の自給自足)。
  • 炉内で生成・閉じ込めることで、環境への放出リスクを最小限に抑えられる
  • ITERでは増殖ブランケットのテストを実施予定 で、商用炉に向けた技術開発が進行中。

2. 「トリチウムレス実験(JT-60SA)」で安全性を確認

JT-60SA(日本) は、トリチウムを使用せずに核融合の研究を行う 実験炉です。

目的:

  • 核融合反応の制御技術を確立するため、安全な環境でプラズマ実験を行う
  • 将来的なトリチウム利用に備え、燃料管理や運用方法を検証する
  • ITERやDEMO炉に適用可能な安全技術を開発

メリット:

  • 放射性物質を扱わないため、リスクを抑えた技術開発が可能。
  • トリチウムの取扱いに関するノウハウを蓄積し、将来の運用に役立てる。
  • ITERやDEMO炉に導入する前に、安全性を十分に検証できる。

トリチウム管理に関する今後の展望

  1. トリチウムの「回収・再利用技術」の確立
    • トリチウムの貯蔵・回収技術を強化し、燃料を循環利用する。
    • 特にトリチウム透過防止技術(バリア材の開発) が重要な課題。
  2. 環境への影響を最小限にする管理体制
    • トリチウムが水に溶けやすいため、排水管理システムの開発 が必須。
    • 漏洩を防ぐための 高性能フィルターや封じ込め装置の導入
  3. 商用炉に向けた「トリチウム燃料サイクル」の確立
    • ITERやDEMO炉では、増殖ブランケットを標準装備し、完全なトリチウム循環システムを構築する計画
    • トリチウム供給の安定性を確保するため、国際的な燃料管理体制の構築 も求められる。

4. 核融合発電と原子力発電(核分裂)の違い

核融合発電と原子力発電(核分裂)は、どちらも 「原子核の反応を利用してエネルギーを生み出す」 という点では共通していますが、反応のメカニズム、燃料、放射性廃棄物、安全性 などに大きな違いがあります。

以下の表に、両者の違いをまとめます。

項目核融合発電原子力発電(核分裂)
エネルギー発生の仕組み軽い原子核(重水素・三重水素)が融合し、ヘリウムとエネルギーを生成重い原子核(ウラン・プルトニウム)が分裂し、エネルギーを放出
燃料水素の同位体(重水素・三重水素)ウラン235、プルトニウム239
燃料の供給源重水素は海水から容易に抽出可能。三重水素は炉内で生成ウラン・プルトニウムは限られた鉱山から採掘
エネルギー密度1gの燃料で石油8トン分 のエネルギーを発生1gのウランで石炭3トン分 のエネルギーを発生
発電効率研究段階のため不明(ITERではQ=10以上を目指す)一般的に30~40%
放射性廃棄物ほぼなし。炉の壁材が放射化するが、100年程度で減衰高レベル放射性廃棄物が発生。処理に数万年単位の管理が必要
事故・暴走の可能性なし(供給停止で反応が止まる)あり(制御が必要)(チェルノブイリ・福島事故など)
安全対策燃料を止めれば即座に反応停止冷却装置や制御棒で連鎖反応を抑える必要がある
二酸化炭素(CO₂)排出ゼロゼロ(ただし燃料採掘・処理時にCO₂発生)

核融合発電の最大のメリット:「暴走の危険性がない」

核融合発電は、反応を止めれば即座に停止する

  • 核融合は、反応を維持するために1億度以上の高温環境が必要
  • もし冷却装置や磁場閉じ込め装置が停止しても、燃料供給がなくなれば、プラズマは瞬時に冷えて反応が止まる
  • 事故が発生しても「暴走」することはなく、安全性が高い。

原子力発電(核分裂)は連鎖反応が起こる可能性がある

  • 核分裂反応は、一度始まると 連鎖的に拡大する(ウラン原子核が分裂し、その中性子がさらに別のウランを分裂させる)。
  • 制御棒で反応を抑える仕組みだが、事故や故障で冷却ができなくなると、燃料が過熱し暴走する可能性がある
  • チェルノブイリ(1986年)、福島第一原発(2011年)などの事故では、核分裂反応の暴走により大規模な被害が発生した。

核融合発電の燃料と原子力発電の燃料の違い

核融合の燃料(重水素・三重水素)は枯渇しない

  • 重水素(D) は、海水1リットルあたり 約33mg 含まれており、事実上 無尽蔵
  • 三重水素(T) は自然界にほぼ存在しないが、核融合炉内でリチウムから生成可能(増殖ブランケット技術)。

核分裂の燃料(ウラン・プルトニウム)は限られている

  • ウラン鉱山から採掘されるため、埋蔵量に限りがある(推定100~200年分)。
  • ウラン235の濃縮が必要で、コストや核拡散リスクがある

放射性廃棄物の違い

核融合発電と原子力発電では、発生する 放射性廃棄物の性質と管理の難易度 に大きな違いがあります。

核融合発電の廃棄物

  • 燃料自体は ヘリウム(無害な気体) に変化するため、放射性廃棄物はほぼ発生しない
  • 高速中性子により炉の壁材が放射化するが、100年程度で減衰 し、管理が容易。

原子力発電(核分裂)の廃棄物

  • 使用済み核燃料は 高レベル放射性廃棄物(HLW) となり、数万年以上の長期管理が必要
  • プルトニウムは核兵器転用の危険性があるため、国際的な厳格な管理が必要。
  • 2023年現在、世界のどの国も使用済み核燃料の最終処分場を完全には確保できていない

発電効率とコストの違い

核融合発電はまだ研究段階のため、商用炉の発電効率は未知数 ですが、ITERでは Q=10以上(投入エネルギーの10倍を発電) を目指しています。

原子力発電(核分裂)の発電効率

  • 一般的な原子力発電所の効率は30~40%(熱エネルギーのうち30〜40%を電力に変換)。
  • 1gのウラン燃料で 石炭3トン分のエネルギーを生産可能

核融合発電の発電効率(将来予測)

  • 1gの燃料で 石油8トン分のエネルギーを生産可能(理論値)。
  • 燃料供給が容易で、長期的には 低コストの発電が可能

5. 世界の核融合発電研究の最前線

現在、核融合発電の実用化に向けた研究は、世界中で急速に進んでいます。 各国が国家プロジェクトとして取り組むだけでなく、近年では民間企業も積極的に参入し、技術革新が加速しています。ここでは、主要な研究機関・企業の取り組みを詳しく紹介します。


5-1. 中国のEASTとCFETR:世界最長のプラズマ維持記録と商用炉開発

① EAST(Experimental Advanced Superconducting Tokamak)

EASTは、中国安徽省合肥市にある中国科学院・等離子体物理研究所(ASIPP)が運用する超伝導トカマク実験炉 です。

主な成果:

  • 2021年:1億2千万度のプラズマを 101秒 維持
  • 2023年:1億度のプラズマを 403秒 維持(当時の世界記録)
  • 2024年:1億度のプラズマを 1,066秒(約17分) 維持(世界最長記録)

この実験では、マイクロ波加熱(ECRH)と中性粒子ビーム加熱(NBI)を組み合わせることで、長時間安定したプラズマを維持 することに成功しました。EASTの成果は、ITERや将来の商用炉に向けたプラズマ閉じ込め技術の進展に貢献 しています。


② CFETR(Chinese Fusion Engineering Testing Reactor)

CFETRは、EASTの次のステップとして、中国が独自に開発を進める商用炉の前段階となる実験炉 です。

主な目標:

  • 発電出力200MW~1000MW(ITERの10倍規模)
  • トリチウム増殖技術の確立(燃料の自己供給を実現)
  • 長時間運転(数時間以上の連続運転)
  • 商業炉設計のための基盤データ収集

中国は、国家戦略としてCFETRを推進し、2030年代の稼働を目指しています。これが成功すれば、中国は世界で最も核融合技術が進んだ国の一つとなる可能性があります。


5-2. 日本のJT-60SAと東芝の取り組み

① JT-60SA(Super Advanced)

JT-60SAは、日本が主導し、EUと共同で建設した世界最大級のトカマク実験炉 です。茨城県那珂市にある量子科学技術研究開発機構(QST) が運用しています。

JT-60SAの特徴と目的:

  • ITERに先駆けたプラズマ制御技術の開発
  • より高密度なプラズマ閉じ込めを実現する「高ベータ運転」 の実験
  • トリチウムレス実験による安全性評価
  • 日本独自の超伝導コイル技術を活用

2023年10月には、初のプラズマ生成に成功 し、今後はより長時間のプラズマ運転を目指して研究が進められています。


② 東芝・三菱重工の取り組み

日本の民間企業も、核融合技術の開発に積極的に関与しています。

  • 東芝 は、ITERの超伝導コイル(トロイダル磁場コイル)を製造 し、強力な磁場を生成する技術を提供。
  • 三菱重工 は、JT-60SAの真空容器や加熱装置を開発 し、核融合炉の設計・製造技術をリード。

日本は、核融合炉の「部品・技術提供」において世界トップクラスの競争力を持っており、将来の商用炉開発でも重要な役割を果たすと考えられています。


5-3. 欧州のITERとDEMO炉:世界最大の核融合プロジェクト

① ITER(International Thermonuclear Experimental Reactor)

ITERは、フランスのカダラッシュで建設中の世界最大の国際核融合実験炉 です。EU、日本、アメリカ、中国、ロシア、韓国、インド の7極が共同で開発を進めています。

主な目標:

  • Q値(エネルギー収支)を10以上にする(発生エネルギーが投入エネルギーの10倍以上)
  • プラズマを400秒以上維持する
  • 2025年にファーストプラズマ、2035年には本格的な核融合実験を開始予定

② DEMO炉:商用発電に向けた最終ステップ

ITERの次の段階として、欧州と日本は**「DEMO炉(Demonstration Power Plant)」の設計を進めています。**

DEMO炉の目標:

  • 商用原型炉として、1000MW以上の発電を実現
  • トリチウム燃料サイクルの確立(完全な燃料再利用)
  • 2040〜2050年の運転開始を目指す

ITERが成功すれば、DEMO炉を経て、2050年以降には商用核融合発電が実現する可能性があります。


5-4. アメリカの民間企業の挑戦:商用化を加速するスタートアップ

近年、アメリカでは民間企業が核融合発電の商用化に向けて大規模な投資を行い、技術開発を急速に進めています。

① Helion Energy(ヘリオン・エナジー)

  • 独自の「パルス磁場閉じ込め方式」 を採用し、ITERとは異なるアプローチで商用炉を開発中。
  • 2024年には初の商用炉「Polaris」を完成させる計画。
  • マイクロソフトと電力供給契約を締結 しており、2028年までに実用化を目指している。

② TAE Technologies(トライアルファ・エナジー)

  • 水素-ホウ素(p-B11)核融合を目指す 革新的企業。
  • 放射性廃棄物ゼロの核融合発電を実現する可能性がある
  • Googleと提携し、AI技術を活用したプラズマ制御を研究

③ Commonwealth Fusion Systems(CFS)

  • MIT(マサチューセッツ工科大学)発のスタートアップ
  • 強力な高温超伝導磁石(HTS)を活用したコンパクトな核融合炉「SPARC」を開発
  • 2025年までに核融合エネルギーの実証を目指す

④ GoogleのAI技術活用

  • Googleは、核融合のプラズマ制御を最適化するためにAI技術を導入
  • プラズマの安定維持時間を改善するアルゴリズムを開発 し、既存のトカマク炉の性能向上に貢献。

6. まとめ:核融合発電は不可能ではないが、実用化には時間が必要

  • 技術的には可能 だが、エネルギー収支やプラズマ制御の課題が残る
  • 2050年頃の商用化 を目指して各国が研究中
  • 放射性廃棄物は少なく、環境負荷も低い
  • 最先端技術を活用すれば、未来のクリーンエネルギーとなる可能性が高い

核融合発電の未来に期待しつつ、今後の研究の進展を見守りましょう!


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