【1】突然の報道で広がる「遺族年金が5年で終わる」という不安

2025年から「遺族年金の制度が変わる」「支給が5年間で打ち切られる」という報道がSNSやニュースサイトを中心に話題になっています。
特に、「専業主婦は老後どうなるの?」「夫にもしものことがあったら生活できない」といった将来への不安の声が広がっています。
しかし、すべての人にこの制度改正が当てはまるわけではありません。
正しく制度内容を理解すれば、必要以上に不安を抱く必要はなく、今からの準備で十分に対応可能です。
【2】そもそも「遺族年金」とは?|基礎から正確に理解する

まず、遺族年金の仕組みを簡単に整理しておきましょう。
遺族年金には2種類あります
種類 | 支給元 | 対象者 | 支給条件 |
---|---|---|---|
遺族基礎年金 | 国民年金 | 18歳未満の子どもがいる配偶者、または子ども | 国民年金加入者が死亡した場合 |
遺族厚生年金 | 厚生年金 | 配偶者・子・父母・祖父母など | 厚生年金加入者が死亡した場合 |
今回見直しの対象になるのは、このうち**「遺族厚生年金」**です。
特に「子どもがいない配偶者」が中心となります。
【3】2025年から段階的に実施される改正内容まとめ

2025年度から、厚生労働省は以下の内容を段階的に導入していく方針を打ち出しています。
改正ポイント①:5年間の有期支給に統一
- 子どもがいない配偶者への遺族厚生年金の支給は5年間限定
- 男女とも、年齢に関係なく対象(ただし、60歳以上は対象外)
- 支給額は増額(満額支給)となる見込み
改正ポイント②:男女差の撤廃
- これまで男性配偶者は55歳未満では受給できなかった
- 今後は男女ともに平等に5年間支給される仕組みへ
改正ポイント③:中高齢寡婦加算の廃止
- 40~64歳の女性が対象の「中高齢寡婦加算」(年間約60万円)が段階的に廃止予定
※「中高齢寡婦加算(ちゅうこうれいかふかさん)」とは、遺族厚生年金の受給者で、40歳以上65歳未満の妻に対して加算される年金額のことです。
これは、夫が亡くなった後に一定の年齢(=中高齢)で、子育てが一段落していても仕事に就くことが難しい女性を経済的に支援するための制度です。
改正ポイント④:収入制限の撤廃
- 従来は年収850万円以上の人は受給対象外だったが、今後は撤廃される予定
改正ポイント⑤:死亡時分割制度の導入
- 亡くなった配偶者の厚生年金加入期間を「婚姻期間に応じて生存配偶者の老齢年金に加算」する新制度
- 長期的に見れば老後の年金額にプラスの影響が期待できる

【4】「5年間だけ」の真実|実際に対象となるのは誰?
多くの誤解がありますが、「すべての人が5年で打ち切られる」わけではありません。
対象となる人
- 20〜50代で子どもがいない配偶者
- 厚生年金に加入していた配偶者を亡くした場合
- 制度の施行以降に新たに該当した人
対象外となる人(現行通り)
対象者 | 改正の影響 |
---|---|
60歳以上で配偶者を亡くした人 | 生涯支給が継続 |
18歳未満の子がいる家庭 | 遺族基礎年金+厚生年金の支給あり(改正の影響なし) |
すでに遺族年金を受け取っている人 | 現行制度が適用(打ち切りなし) |
国民年金のみの配偶者 | 改正の対象外(遺族厚生年金がないため) |
【5】ケース別シミュレーション:実際の影響を徹底解説
ケース1:30歳未満の子なし専業主婦(2026年に夫が死亡)
- 旧制度でも5年間の支給だった
- 改正後は男女平等である一方、支給額が満額になる見込み(手取り増加の可能性)
ケース2:35歳・子どもなしの共働き夫婦
- 妻が夫に先立たれた場合:5年間の支給で終了
- その後の生活設計が課題。死亡時分割で老後年金は増加の可能性あり
ケース3:50代・子がすでに独立している専業主婦
- 段階的な導入のため、55歳未満であってもすぐに適用される可能性は低い
- 影響を受けるかは導入スケジュール次第だが、支給期間が5年に短縮される可能性あり
ケース4:60歳の女性が夫を亡くす
- 改正対象外。従来通り、生涯にわたって遺族年金を受給可
ケース5:40歳の会社員男性が妻を亡くす(子どもなし)
- 改正前は「支給なし」だった
- 改正後は男女平等で5年間の遺族厚生年金を受給可能に
【6】よくある誤解とその正しい理解
よくある誤解 | 正しい内容 |
---|---|
すべての人の支給が5年で終わる | 子どもがいない若年配偶者のみ。60歳以上や子あり家庭は対象外 |
今すぐ制度が変わる | 2025年から段階的に実施。今すぐ影響が出るわけではない |
すでに受給中の人も打ち切りに | 既得権として維持され、打ち切りなし |
専業主婦の老後が保障されなくなる | 死亡時分割制度や老齢年金で一部補填される可能性あり |
【7】まとめ:将来に備えるために「今」できること

制度改正に備えて、慌てる必要はありませんが、「知らなかった」では済まされない備えが必要です。
1. 夫婦で「ねんきんネット」を使い、年金額を把握
- 夫婦での老齢年金・遺族年金の見込み額を確認
- 自分の年金に不安があれば、今から対策を検討
2. 生命保険・収入保障保険の活用
- 遺族年金だけでは生活が厳しいケースも
- 月々数千円の保険で、死亡後5年間の生活費を補完可能
3. ライフプランの見直しと就労機会の確保
- 特に専業主婦の方は、パート・再就職などを検討することも重要
- 万一の際に「自立できる選択肢」があると安心感が増す
おわりに
2025年からの遺族年金制度改正は、多くの家庭にとって重要なテーマです。ただし、正しく理解すれば、必要以上に不安になることはありません。
制度は変わっても、「生活を支える仕組み」そのものが失われるわけではないことを理解し、冷静に、計画的に備えていくことが何より大切です。

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