なぜ注目されていたはずのロボティクスファンドが下落しているのか?
「生成AI」「自動化」「ロボティクス」――これらは近年の成長テーマとして高く評価され、将来有望な投資対象と見なされてきました。その中心的なファンドの一つが**日興アセットマネジメントが運用する「グローバル・ロボティクス株式ファンド」**です。
しかし2024年半ば、このファンドの基準価額は一時的に大きく下落。SNSや投資家フォーラムでは「なぜ株価が上がらないのか」「もう回復しないのでは?」といった不安の声も多く聞かれました。
この記事では、株価が伸び悩んでいた理由と、今後の回復可能性、そして投資家が取るべき視点についてわかりやすく解説します。
株価が上がらない背景とは?2024年の下落要因を総整理
2024年7月〜8月にかけて、グローバル・ロボティクス株式ファンドの基準価額は目に見えて下落しました。ラザード社の運用担当者である岸田氏は、この下落について主に5つの要因を挙げています。
1. 米国景気後退の懸念
アメリカでは雇用や消費関連の統計が弱含み、景気後退入りの可能性が意識され始めました。これにより投資家心理が悪化し、成長株やハイテク株中心のロボティクス関連も売られる展開となりました。
2. 日銀のサプライズ利上げと円高懸念
同時期に、日本銀行が予想外の利上げを実施。このニュースが為替市場を揺るがし、一時的に円高が進行。円高は米ドル建て資産の価値を相対的に押し下げ、日本の投資家にとってファンドの価値も目減りして見える状況を作り出しました。
3. NVIDIA製品の遅延懸念(ブラックウェル)
生成AI分野を牽引するNVIDIAが開発する次世代半導体「ブラックウェル」の発売が、設計の複雑さにより遅れる可能性が報じられ、市場に一時的な不安を与えました。これにより、AI半導体銘柄が全体的に売られました。
4. 生成AIブームの過熱懸念
AmazonやMicrosoftなどが巨額の投資を続ける中、将来の投資回収に対する懸念も広がりました。「本当にこの規模の投資は正当化されるのか?」という疑問が一部投資家の間で浮上し、関連銘柄の株価に圧力をかけました。
5. インテルの業績悪化と設備投資縮小
Intelが発表した2024年の決算では、赤字の継続・配当停止・大規模な人員削減・設備投資の2割カットが発表されました。これにより、半導体製造装置関連や資本財企業にも売りが波及しました。
実は回復傾向?2025年にかけての反転シナリオとは
2025年初頭にかけて、グローバル・ロボティクス株式ファンドのパフォーマンスは徐々に回復傾向を見せています。下落時の原因として挙げられた要因も、いくつかはすでに好転している兆しがあります。
ブラックウェル問題は市場が冷静に評価
NVIDIAの新製品遅延についても、実際の決算では影響は軽微とされ、「すでに次世代製品にスムーズに引き継がれる」という見通しが明らかにされました。AI投資ブームに対する懐疑的な声もやや後退し、投資競争はむしろ加速中です。
米国景気はソフトランディング予想に
当初懸念された景気後退も、足元では「ソフトランディング(緩やかな減速)に留まる」との見方が主流になっています。また、FRBによる利下げも2025年内に1~2回行われる可能性があり、企業の投資環境は改善に向かっています。
トランプ2.0政策への期待
2024年11月の大統領選でトランプ氏が再選したことにより、減税・規制緩和・製造業の国内回帰(リショアリング)政策がロボティクス関連企業にプラスに働くとの見方が広がっています。
個人投資家はどう向き合う?一時的な下落をどう捉えるべきか
株価(基準価額)が一時的に下がると、不安になるのは当然のことです。しかし、中長期の視点で考えると、構造的な成長テーマは揺るいでいません。
自動化・AI化は不可逆のメガトレンド
グローバル・ロボティクス株式ファンドが注目しているテーマ(自動化、AI、ロボティクス)は、労働人口の減少という長期課題を背景に、今後10年以上続く可能性の高いトレンドです。
分配金は堅調な実績を維持
分配金も安定しており、2024年は年2,500円の分配が行われました。2025年も1月にすでに1,000円が支払われており、7月の追加分配も期待できる状況です。
バリュエーション的には“仕込み時”か?
2024年後半の調整により、ハイテク・生成AI関連株は過熱感が和らいだ水準にあります。ラザード社も「今のような株価変動はむしろ投資チャンスと捉えるべき」と述べています。
まとめ:短期のノイズに惑わされず、長期視点での判断を
「グローバル・ロボティクス株式ファンドの株価が上がらない」と感じた方にとって、今回の下落は大きなショックだったかもしれません。しかし、それは一時的なものであり、ファンドの基礎を支える「人口動態×技術革新」というストーリーは全く揺らいでいません。
今後の成長性や、AI・ロボットのさらなる進化を信じる投資家にとっては、むしろ冷静に買い増しを検討できるタイミングとも言えます。
資産形成において大切なのは、「何に投資するか」だけでなく、「どう向き合い、どう待てるか」です。ロボティクスという未来産業の成長を信じるなら、今は“慌てるべき時”ではないのかもしれません。




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